手足口病ってどんな病気?

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はじめに

 手足口病という名前を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。コクサッキーウイルスやエンテロウイルスが原因で起こる病気で、多くは7歳以下のこどもに起こる病気ですが、実はすべての年齢の方で発生する可能性があるのです。2024年は初夏から流行し始めて、秋冬になってもまだ患者さんが発生するという珍しい現象が起こりました。私も多くの手足口病の方を外来で診療しました。

 この記事では医療従事者ではない一般の方に向けて、わたくし総合診療医かずきが経験や知識をもとに手足口病について必要な情報をわかりやすくまとめました。これを読むことで、手足口病について必要かつ十分な情報を得ることができます。

手足口病の症状・特徴

 手足口病の最大の特徴は手・足・口に発疹(ほっしん)が出ることです。まず、その特徴をみていきましょう。

手足の発疹

 手のひらや足の裏・足の甲に、直径2から5mm程度で、少し隆起があって、中に水が貯まっているように見えるような発疹(=水疱)、というのが典型的な手足口病の発疹です。水疱の中の水は透明だったり少し濁ったように見えたりします。さらに、かゆみがなくかさぶたがない、という特徴があります。痛みはないことが多いのですが、痛くなることもあります。

 ただ、必ずしも水疱のような発疹ばかりではありません。隆起がなくただ色が変わっているケースもあり、このような発疹を斑(はん)と言います。

 皮疹の大きさも通常は2から5mm程度ですが、1mmくらいのこともあったり、10mmくらいの大きさのこともあります。報告では20mmの大きな発疹の報告もあるのです。

 皮疹の場所は、手だと指の背・指の間・手のひら、足であれば足の指の背・足の裏・かかと、によく見られます。一方、おしりや大腿、腕などに現れることもあります。手足口病の非典型的な皮膚所見を調査したレビュー文献によると、非典型的部位として腕や脚(47%)・顔(45%)・体幹(27%)、発疹の特徴として湿疹様・紫斑/点状出血様になることもある、と報告されています。

 これらの皮疹はかさぶた(痂皮)を作らずに3から7日程度(長くても10日程度)で治癒します。塗り薬などの特別な治療は不要なので、そのまま治るのを待ちましょう。

 発疹の形態や部位にかなりのバリエーションがあり、診断には相応の知識や経験が必要になります。診断を受けるためには一度医療機関を受診することをお勧めします。

口の粘膜疹

 口腔(こうくう)粘膜に粘膜疹が出ることも手足口病の大きな特徴です。頬の粘膜・舌・口蓋垂(こうがいすい=のどちんこ)やその周囲の口蓋粘膜などに出現します。最初は赤み(紅斑)で始まり、中心が水疱になりますが、すぐに水疱は破裂して潰瘍になります。潰瘍の直径は通常1から10mm程度です。潰瘍部分は灰色から黄色になり、周辺は赤くなっています。

 口腔内の粘膜疹は痛みを伴うことが多く、言葉を話せないこどもの場合は食事を拒否するという行動をとることがあります。

 手足口病という名前からは、口の病変は必須と思いがちですが、口腔粘膜に粘膜疹が出ない場合もあります。意外ですよね。これらも手足の皮疹と同様、特別な治療は不要です。

発熱

 手足口病では熱が出ることがあります。ただ、高熱が出ることは稀で、38度未満のことが多いと言われています。これについても特別な治療は不要で、自然に治まるのを待ちましょう。発熱によって倦怠感が出てつらい方は、解熱薬を使っても良いでしょう。

爪の脱落

 コクサッキーA6による手足口病の場合、発症後数週間で爪の脱落が起こることがあります。これも特別な治療は不要なので、基本的に受診は不要です。

稀だけど重症化する場合の症状

 手足口病は軽症な疾患で、重症化はめったに起こりません。ただし、エンテロウイルスA71による場合、稀に重症化する場合があり、脳幹脳炎・急性弛緩性麻痺・無菌性髄膜炎などの報告があります。

 頭痛・嘔吐・意識障害・脱力などの症状がある場合は、医療機関を受診して相談しましょう。

どうやって診断するのか

 手足口病の診断に、特別な検査は不要です。医師が、経過や症状・診察所見そして周囲の流行情報をもとに診断します。

治療法は?

 手足口病に対して特別な治療法はありません。皮疹についても外用薬は不要で自然に治癒します。治癒までの期間は、3から7日間(長くても10日間)です

 口腔粘膜の皮疹による痛みで食事を拒否してしまう場合は、柔らかめで薄味の食べ物をとるようにしましょう。それでも食事を摂れないときは、水分を少量ずつ頻回に摂るようにしましょう。脱水にさえならなければ重症化することは稀なので、水分を摂取しながら痛みが治まって食事がとれるようになるのを待ちましょう。水分もとれなくなっている場合は医療機関を受診して相談しましょう。

予防法は?

 手足口病の原因ウイルスは、感染者の唾液や口からの飛沫、糞便、水疱液に含まれています。それが口から身体の中に入って感染していきます。潜伏期間は3から5日間と言われています。

 手指衛生が感染予防に重要と言われています。

 エンテロウイルスは感染後数週間にわたって便中に排出されるため、おむつを交換したあとの手洗い(手指衛生)はとても重要です。

 尚、手足口病に感染したこどもを保育施設に通わせないようにしたとしても、感染の蔓延を防ぐことはできないと言われています。前述の通り、症状が治まったこどもから感染が拡がる可能性があるし、感染していても無症状のこどももいると言われているからです。

 コロナ禍の2020年、2021年は手足口病の発症数が例年よりも激減しました。手指衛生やユニバーサルマスクなどの感染対策が行われたからと考えられます。どうしても感染したくない場合は、手指衛生の徹底に加えてマスクを着用すると良いでしょう。

学校や保育園・幼稚園はいつから行けるのか?

 前述の通り、症状が回復したあともウイルスは長期間にわたって排出されるので、登校登園停止にすることで流行阻止をねらっても効果はあまり期待できません。したがって、学校保健法でも特別な登校停止期間を定めていません。本人の症状・状態が安定していれば登校登園は可能です。簡単に言えば、熱がなく食事が摂れていればOKと考えてよいでしょう。皮疹がすべて改善しなければならないということもありません。

まとめ

 手足口病についてまとめてみました。診断を受けるために一度は医療機関の受診は必要と思われますが、この記事を読んでいただければ、再受診が必要になるケースは極めてまれだということがご理解いただけると思います。ご参考になれば幸いです。

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