新型コロナワクチンの全額公費接種は2024年3月末で終了になりました。2024年秋冬からは、65歳以上の方(及び60歳から64歳で対象となる方)に対し、新型コロナの重症化予防を目的として自治体による定期接種が行われることになっています。
また、従来のメッセンジャーRNAワクチン(以下 mRNAワクチン)や組み換えタンパクワクチンに加えて、新しくレプリコンワクチンが販売されて話題となっています。
この新型コロナワクチン、打つべきなのか?打たなくて良いのか?総合診療医かずきが解説します。
全額公費接種から定期接種+任意接種に
全額公費接種は2024年3月末で終了し、定期接種+任意接種になる、という大きな変更がありました。つまり、自己負担が発生するということです。下のboxにまとめてみました。

自己負担額は自治体によって多少変わりますが、目安額を書いています。定期接種の対象になる方については、比較的安価で新型コロナワクチン接種が可能ですが、任意接種の方は自己負担額がかなり高額になっており、気軽には打てない額になってしまいました。
新型コロナワクチンの効果
自己負担がかかるようになり、かつ任意接種の方だとかなり高額となってしまうと、気になるのはワクチンの効果がどの程度か、という点になってきます。以下で解説します。
ワクチンによる感染予防効果
まず、ワクチンを打つことでどの程度感染予防できるか、という点について解説します。ここでは、ファイザー社やモデルナ社に代表されるmRNAワクチンの効果をまとめます。
新しい新型コロナワクチンを接種すると、打っていない人と比べて30〜50%の人が感染予防できる
ただし、その効果は接種から2〜3ヶ月でなくなってしまう
- 過去に何回打っているかは関係なく、新しいワクチンを打ったかどうか
- ワクチン打っていないと100名が感染する場合、ワクチンを打っていると50〜70名が感染する(30〜50名が守られる)、というくらいの確率
かなり微妙な効果ですよね。
ワクチンによる重症化予防効果
重症化予防効果については
新しい新型コロナワクチンを接種すると、打っていない人と比べて40〜70%の入院を減らすが、その効果も接種から2〜3ヶ月でなくなってしまう
新しい新型コロナワクチンを接種すると、20〜40%の死亡を減らすことが出来る。どの程度効果が持続するかは不明
これもかなり微妙な結果です。
これを踏まえてどう考えるかですが、今現在新型コロナウイルス感染症の重症化率や死亡率を確認してから考えるのが良いでしょう。
新型コロナウイルス感染症の現状
新型コロナウイルス感染症の重症化率・死亡率は、パンデミック当初よりも低下しています。
米国の疾病対策予防センター(CDC)のデータによると、パンデミックが始まった2020年から2021年と2023年を比較すると、入院になる症例数は1/3から1/2に減少していました。
新型コロナウイルス感染症による死亡率も年々下がってきているというデータがありますが、一方で入院患者の致死率を調査した2022年から2023年にかけての米国の研究では、インフルエンザ入院患者の死亡率(3.75%)よりも新型コロナウイルス感染症入院患者の死亡率(5.97%)の方が高かったのです。
つまり、以前に比べると重症化率・死亡率は下がっているものの、インフルエンザよりも死亡率は高く、リスクの高い人にとっては油断できない病気と言えます。
では、どのような方が「リスクの高い方」に該当するのでしょうか?代表的な重症化リスク因子を以下にまとめます。

現状、新型コロナウイルスワクチンを接種すべき人は?
新型コロナウイルス感染症の現状(重症化率、致死率)を考慮し、どのような方はワクチン接種をするべきか、総合診療医かずきの意見を述べたいと思います。
定期接種に該当する方、つまり65歳以上(および60歳〜64歳の心・肺・腎疾患/HIV感染により生活に極端な制限・不可能)の方、は重症化リスク因子を満たしかつ比較的安価に接種することが可能なので、ワクチン接種をおすすめします。
重症化リスク因子に該当するものの、定期接種に該当しない方は悩むところです。リスクはあるものの、接種しようとすると15,000円前後の費用負担が必要になるためです。前述の通り、ワクチンの効果も限定的なので、正直申し上げて総合診療医かずきとしては積極的におすすめすることを躊躇してしまいます。最終的には、個々人の価値観で判断してもらうしかないと思っています。
重症化リスク因子にも該当せず65歳未満の方については、正直申し上げて接種する意義は低いと思いますが、「どうしても感染リスクを下げたい」「効果が期間限定でも構わない」「接種代金が高くても構わない」という方は受けていただいて良いでしょう。
では最後に、レプリコンワクチンについて解説したいと思います。
新型コロナワクチンの種類
2024〜2025年秋冬で接種可能な新型コロナワクチンは5種類あります。下の表にまとめました。

ファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックスは多くの方が接種された経験があると思います。このふたつはmRNAワクチンと呼ばれるもので、新型コロナワクチンとしては早期から使われるものですから安心して接種できると言えるでしょう。ダイチロナは日本の第一三共が開発したmRNAワクチンです。新しいワクチンではありますが、ファイザー・モデルナのワクチンを同じ製法なので、ほぼ同様の効果が期待されています。
組み換えタンパクワクチンであるヌバキソビッド(武田)も以前から存在する新型コロナワクチンで、効果も証明されています。
一方、Meiji Seikaのコスタイベは、レプリコンワクチンという新しい製法で作られています。このレプリコンワクチンについて解説します。
レプリコンワクチンについて
このレプリコンワクチンは、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンに似ています。mRNAワクチンは、新型コロナウイルスの標的抗原のmRNAをワクチンとして接種するものです。ウイルスそのものではなく、あくまで標的抗原のmRNAをワクチンとして接種しているというのがポイントになります。
レプリコンワクチンは、標的抗原のmRNAに自己増殖するreplicaseという遺伝子をくっつけたものになります。これを接種すると、標的抗原が数週間程度自己増殖するので、それに対する免疫応答がより長時間持続することが期待できるというわけです。
繰り返しますが、自己増殖するのはウイルスそのものではなく標的抗原なので、ワクチン接種者と接触した未接種者が影響を受けるということ(シェディング)は理論的にあり得ません。さまざまなデマが流れて、過剰な対応がされたりしていましたが、冷静に判断していただきたいところです。
このレプリコンワクチン、治験は行われていますが2024年9月に発売されたばかりの新薬です。そのため、まだ長期の副反応調査や有効性についてのデータがありません。したがって、総合診療医かずきとしては現時点でこのレプリコンワクチン(コスタイベ®)を推奨しません。ただ、長期のデータをみた上で判断したいと思っているので、今後推奨する可能性はあります。あくまで「現時点では推奨しない」ということです。
したがって、現時点での新型コロナウイルスワクチンの推奨としては、mRNAワクチンであるファイザーのコミナティ®、モデルナのスパイクバックス®、第一三共のダイチロナ®、組換蛋白ワクチンの武田のヌバキソビッド®、になります。
まとめ
新型コロナウイルスワクチン2024年秋冬のまとめです。あくまで総合診療医かずきの意見ですが、ご参考になれば幸いです。
- 全額公費接種から、自治体による定期接種B類+任意接種となった。
- 定期接種B類の対象は、65歳以上(および60歳〜64歳の心・肺・腎疾患/HIV感染により生活に極端な制限・不可能)の方、それ以外の方は任意接種になる。
- 定期接種B類は、自治体によって異なるが0〜3,000円の自己負担
- 任意接種は、自治体によって異なるが15,000円前後の自己負担
- mRNAワクチンの効果は、以下の通り
- 新しい新型コロナワクチンを接種すると、打っていない人と比べて30〜50%の人が感染を予防できる。ただし、その効果は接種から2〜3ヶ月でなくなってしまう
- 新しい新型コロナワクチンを接種すると、打っていない人と比べて40〜70%の入院を減らすが、その効果も接種から2〜3ヶ月でなくなってしまう
- 新しい新型コロナワクチンを接種すると、20〜40%の死亡を減らすことが出来る。どの程度効果が持続するかは不明
- 新型コロナウイルス感染症の重症化率・死亡率は以前より下がっているものの、インフルエンザよりも死亡率は高く、リスクの高い人にとっては油断できない病気
- 定期接種に該当する方、比較的安価に接種することが可能なので、ワクチン接種をおすすめする。
- 重症化リスク因子(高齢、がん、糖尿病、心血管疾患、呼吸器疾患、肝疾患、腎疾患、免疫不全、妊娠中、肥満)に該当しない方は、接種する意義は低い。
- 重症化リスク因子に該当するものの、定期接種に該当しない方は接種すべきか悩ましい。個々人の価値観で判断。
- 現時点での推奨としては、mRNAワクチンであるファイザーのコミナティ®、モデルナのスパイクバックス®、第一三共のダイチロナ®、組換蛋白ワクチンの武田のヌバキソビッド®
- レプリコンワクチンは、標的抗原のmRNAに自己増殖するreplicaseという遺伝子をくっつけたもの。標的抗原が数週間程度自己増殖するので、それに対する免疫応答がより長時間持続することが期待できる。自己増殖するのはウイルスそのものではなく標的抗原なので、ワクチン接種者と接触した未接種者が影響を受けるということ(シェディング)は理論的にあり得ない。
- 長期の副反応調査や有効性についてのデータがないので、現時点でこのレプリコンワクチン(コスタイベ®)を推奨しない。
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