こんにちは、総合診療医かずきです。今回は、肺炎球菌ワクチンについて解説します。
「65歳から5年ごとに打っているよ」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そのやり方はすでに周回遅れになっています。ここ数年で肺炎球菌ワクチンの状況は激変しました。2025年10月29日に新しいワクチンPCV21(キャップバックス®)が発売され、推奨のあり方が大きく変わっています。
この記事では、恐ろしい肺炎球菌感染症のこと、ワクチンの種類とその効果、費用・副反応、そして2025年12月時点の最新推奨について詳しく解説します。
なぜ肺炎球菌ワクチンが重要なのか?
肺炎球菌感染症とは
肺炎球菌によって起こる感染症には、中耳炎・副鼻腔炎・普通の肺炎(予後は比較的良好)などがありますが、中でも特に危険なのが侵襲性肺炎球菌感染症(IPD:Invasive Pneumococcal Disease)です。
IPDには髄膜炎や菌血症を伴う肺炎が含まれ、死亡率は16〜20%と非常に高い感染症です。5類感染症に指定されており、全例届け出が義務付けられています。コロナ禍で一時減少していましたが、近年、高齢者のIPDが再び増加してきています。
ワクチンの最大の目的は、このヤバいIPDを予防して死亡者を減らすことです。
肺炎球菌ワクチンの種類と最新情報【2025年12月】
肺炎球菌ワクチンには大きく2種類あります。多糖体ワクチンと結合型ワクチンです。
多糖体ワクチン:ニューモバックス®(PPSV23)
1988年に日本で承認された歴史あるワクチンです。2014年10月から高齢者への定期接種が開始されました(65歳を迎える年度の成人、および60〜64歳で特定疾患を持つ方が対象)。
以前は「5年ごとに接種」という慣例的な運用が行われていましたが、2024年度から65歳で1回のみの案内に変更されました。
PPSV23の問題点は、5〜10年で効果が落ちることです。その理由は「免疫記憶を獲得しないから」。繰り返し接種のエビデンスも乏しく、次世代の結合型ワクチンへの移行が推奨されています。
結合型ワクチン:PCV13・PCV15・PCV20・PCV21
結合型ワクチンは免疫記憶を獲得できるため、効果が長期間持続するのが最大のメリットです。日本では以下の4種類が承認されています。
| ワクチン名 | 承認・適応拡大 | 備考 |
|---|---|---|
| プレベナー®(PCV13) | 2014年6月 高齢者に適応拡大 | 最初は小児用として承認 |
| バクニュバンス®(PCV15) | 2022年9月 成人用で承認 | のちに小児にも適応拡大 |
| プレベナー20®(PCV20) | 2024年8月 高齢者・リスクの高い6歳以上に適応拡大 | 最初は小児用として承認 |
| ★キャップバックス®(PCV21) | 2025年8月承認・10月29日発売 | 現時点で最もおすすめ |
各ワクチンはカバーする肺炎球菌の型(血清型)が異なります。最新のPCV21は近年のIPDの原因となる血清型を最も多くカバーしており、高齢者およびリスクの高い成人に最もおすすめのワクチンです。
結合型ワクチン(PCV13)の効果のエビデンス
65歳以上を対象とした無作為化盲検プラセボ対照試験(N Engl J Med. 2015;372(12):1114.)では、以下の結果が示されています。
- 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に対するワクチン有効性(VE):75.0%
- 普通の肺炎に対するVE:45.6%
- 肺炎全体(肺炎球菌以外も含む)に対するVE:5.1%(95%信頼区間 −5.1〜14.2%)
ワクチンが最も効果を発揮するのは、やはり最も危険なIPD(侵襲性肺炎球菌感染症)の予防です。
費用と副反応の比較【2025年12月最新】
| ワクチン | 接種区分 | 費用の目安 | 主な副反応 |
|---|---|---|---|
| ニューモバックス®(PPSV23) | 定期接種 | 3,000〜4,000円程度 | 局所:疼痛50〜60%、腫脹・紅斑10〜20% / 全身:疲労(数〜10%)、発熱(稀) |
| プレベナー20®(PCV20) | 任意接種 | 12,000〜13,500円程度 | 局所:疼痛79%、腫脹・紅斑20〜30% / 全身:疲労約40%、発熱10%未満 |
| キャップバックス®(PCV21) | 任意接種 | 14,000〜16,000円程度 | 局所:疼痛約40%、腫脹6%、紅斑5.4% / 全身:疲労約20%、頭痛11.5%、筋肉痛約6%、発熱1.3% |
副反応は多くの方にみられますが、通常1〜2日で軽快します。
状況別ワクチン推奨【2025年12月最新版】
①以前に肺炎球菌ワクチンを接種したことがない場合
- 65歳になる年度の方:まず定期接種でPPSV23(ニューモバックス®)を接種し、その後「以前にPPSV23を接種したことがある」カテゴリーに移行する
- 上記以外の方:任意接種でPCV21(キャップバックス®)を接種する
②以前に肺炎球菌ワクチンを接種したことがある場合
定期接種PPSV23(ニューモバックス®)、または任意接種PCV13(プレベナー®)・PCV15(バクニュバンス®)を以前に接種済みの方は、前回から1年以上空けてPCV21(キャップバックス®)を接種することが推奨されます。
ただし、PCV20(プレベナー20®)を接種した方は、あわててPCV21を接種する必要はなく、少し様子をみても問題ないというのが私見です。カバーする血清型が増えるので、理論的にはPCV21を追加接種したほうが良いのですが、臨床的にこの追加接種の根拠となるデータは現時点では存在しません。したがって、慌てる必要はないと考えます。様子をみている間に、IPDの原因になる血清型が変わる可能性もありますし、さらに新しいワクチンが開発される可能性や、キャップバックスが定期接種化される可能性もあるかもしれません。こういった理由から、しばらく様子をみるので良いと考えています。ただ、いくらお金がかかっても最善を期したいという方は、PCV20接種後1年以上空けてキャップバックスを接種しても良いと思います。
まとめ
- 肺炎球菌ワクチンの最大の目的は、死亡率16〜20%のIPD(侵襲性肺炎球菌感染症)の予防
- 2025年10月に最新ワクチンキャップバックス®(PCV21)が発売。現時点で最もおすすめ
- 以前の「5年ごと接種」は周回遅れ。免疫記憶を獲得できる結合型ワクチン(PCV21)への移行が推奨
- 65歳の定期接種(PPSV23)後は1年以上空けてPCV21を接種。未接種の方は任意接種でPCV21から始めてもOK
- 費用は任意接種で14,000〜16,000円程度。副反応は1〜2日で軽快
ご自身の状況に合わせて、かかりつけの医師にご相談されることをおすすめします。このブログでは、根拠に基づいた良質な医学情報をわかりやすく解説しています。


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